行動が激しいトイプードル

ペットショップの店員さんに「お子さんのいいお友達になりますよ」と言われ、そのフワフワしたぬいぐるみのような容姿に惹かれて飼い始めてみたところ……。日に日に行動が激しくなり、私に相談を持ちかけてくれたころには、小学校低学年の息子さんと遊びたくて追いかけ回し、甘噛みの抑制ができてないので、息子さんの膝小僧は血だらけになっているとか。

飼い主さんは、そんな犬を飼ってしまった自分を責めて、息子さんに謝り、もともと犬嫌いだったのに飼うことを了解してくれたご主人にも謝るばかりの日々。大げさではなく、毎晩泣きながら、犬を飼っているいとこに相談を持ちかけていたそうです。

さっそくご自宅に伺ってみると、飼い主さんは、物腰柔らかくやさしそうな女性でした。線が細いと言うのでしょうか、「君は僕がいなくてもひとりで生きていける人だから」なんて決して言われないタイプの方でした。

当のトイプードルの『ポポ』はと言えば、ゲージから出したとたんに、私に向かってうれしそうに走ってきて、そのままジャンプして手に甘噛み攻撃です。抑制もあまりできていないので、なかなか痛かったです。でも、まだ会ったばかりなので決して叱らず、機械的にそのまま捕まえてゲージに逆戻りしてもらいました。

以前友人が飼っていたトイプードルは、私の「親友犬」でした。私は、友人が「トイプードルが欲しい」と言い出したときには反対しました。初めて犬を飼う友人には、決して飼いやすい犬ではないと思ったからです。周りからも「トイプードルは大変よ!」と言われたようですがどうしてもあきらめきれず、私がブリーダーさん宅に同行した上で、「手元に来たら私が勤務していた訓練所に入れる」という約束で飼うことになったのです。

そんなことがあっただけに、ペットショップの店員さんの「いいお友達になりますよ」という発言は、ちょっと(と言うかかなり)説明が足りないように思います。もちろん、とてもいい子になりましたし、飼い主のボーイフレンドよりも私に会ったときのほうが喜んでくれる(笑)という本当にかわいい子でした。でもそれは、私も一生懸命しつけの手伝いをしましたし、友人もがんばってくれた結果によるところが大きいのです。

甘噛みが激しくて流血するため、息子さんはポポがゲージから出てくるとソファに逃げるようにしていたそうなのです。ところが最近では、ポポは鮮やかなジャンプでソファに上がれるようになり、降ろそうとするとうなって威嚇するようになったとのことでした。

私はトイプードルの気質を知っているので不思議はありませんでしたが、小さいお子さんがいるならとても心配です。小学生の子どもの顔の位置あたりなら、助走なしで余裕でジャンプできる身体能力を持っているのがトイプードル。何かのはずみで顔を噛まれたりしたら、大変なことです!

そこで、まずは息子さんの緊急避難場所を作るために、ソファに上らないトレーニングを始めることにしました。ポポをゲージから出してもらうと、すかさずソファに乗ったので、「ポポがソファに乗ったらすぐに首輪をつかみ、『ダメ』など短い言葉でひと言叱って降ろしてください」と見本を見せたのですが、飼い主さんの様子がヘンです。怖いのかな?と思って聞いてみると「何か、かわいそうで……」とのこと。

息子さんが血だらけになっているというのに、ポポがかわいそう‥それがいけないのです!それでは、こちらのメッセージが正しく伝わりません。今伝えなくてはならないのは、「ソファに乗ったら嫌なことが起きるよ」、「乗らなければ嫌なことは起きないし、ほめてもらえるよ」ということなのです。それができなければ、息子さんが遊んでいるときは絶対にポポをゲージから出せないか、出しているときの息子さんの避難場所を作ることはあきらめなくてはなりません。

でも飼い主さんの希望は、「できればポポには息子と仲良くしてほしい」ということでした。だからこそがんばってもらうことにしたのですが、いまひとつ動きにキレがなく、どうも飼い主さんの迫力が足りません。中途半端な飼い主さんのメッセージはポポにとって遊びとなり、トレーニングは「ソファ乗り降りごっこ」になってしまいました。